災害が起きたとき、行政制度はどう動くのか ―被災したときに知っておきたい制度と手続―

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はじめに

地震や豪雨などの大きな災害が発生すると、多くの方は、まず命を守ることや避難することに精一杯になります。
そして少し落ち着くと、今度は生活を立て直すための様々な手続が始まります。
その裏では、普段あまり意識することのない行政制度も、一斉に動き始めています。

罹災証明書の発行、各種支援金の受付、税金や保険料の減免、住宅再建の支援など、生活を立て直すための様々な制度が用意されます。

行政書士としては、もちろんこうした手続のお手伝いをすることもできます。

しかし、災害では家や財産を失い、経済的な負担を抱える方も少なくありません。

もしご自身で手続ができる状況であれば、できるだけご自身でも進められるよう、平時のうちに制度を知っておくことにも大きな意味があると私は考えています。

本記事では、そのような視点から、災害時に関わる行政制度について、一般的な流れをご紹介したいと思います。

行政書士という仕事は、「制度を利用する人」と「制度を運用する行政」との橋渡しをする仕事でもあります。本記事が、その橋を渡る際の小さな道しるべになれば幸いです。

まず最初に重要になるのが「罹災証明書」

災害後、多くの制度の入口となるのが「罹災証明書」です。

これは、市町村が住家の被害状況を調査し、被害の程度を証明する書類です。

被災者生活再建支援金や各種支援制度、税の減免など、多くの制度で提出を求められることがあります。

そのため、被災後はまず市町村からの案内を確認し、必要に応じて申請することが重要になります。

なお、大規模災害では、市町村役場そのものが被災し、通常どおり業務を行えない場合もあります。

そのような場合には、近隣自治体や都道府県による応援体制が組まれたり、広域的な行政支援が行われたりすることがあります。

受付場所や申請方法も通常とは異なる場合がありますので、自治体からの案内を確認することが大切です。

避難所生活のイラスト画像

行政制度は「生活を立て直す仕組み」

災害時に利用できる制度は、一つではありません。

例えば、

  • 被災者生活再建支援金(市町村・都道府県経由)
  • 応急仮設住宅や公営住宅への入居支援(市町村)
  • 税金の減免・納税猶予(市町村・税務署)
  • 国民健康保険・介護保険料の減免(市町村)
  • 国民年金保険料の免除(年金事務所)
  • 雇用保険の特例措置や失業給付(ハローワーク)
  • 中小企業・個人事業主向けの融資制度(日本政策金融公庫・金融機関など)

など、生活のさまざまな場面に応じた制度があります。

それぞれ担当する行政機関は異なりますが、目的は共通しています。

それは、「被災した人が再び生活を立て直せるよう支援すること」です。

また、大規模災害では、通常は別々の窓口で取り扱われる制度についても、自治体内に総合相談窓口が設置されたり、避難所へ行政職員が出向いて相談対応を行ったりすることがあります。

※上記の各制度に記載した窓口は、執筆時点(2026年)における一般的な担当機関を示したものです。実際の災害時には、総合相談窓口の設置や担当部署の変更など、通常とは異なる運用となる場合があります。

一度の相談で複数の制度について案内を受けられる体制が整えられることもありますので、一人で抱え込まず、まず相談窓口を利用することが大切です。

災害時は制度も変わる

災害対応では、平時とは異なる特例措置が設けられることがあります。

例えば、

  • 申請期限の延長
  • 必要書類の一部省略
  • 手数料の免除
  • 新たな給付制度の創設

などです。

つまり、「普段の制度」がそのまま適用されるとは限りません。

そのため、「以前調べたから大丈夫」と思わず、最新の情報を確認することが重要になります。

情報は、

  • 被災した自治体のホームページ
  • 都道府県のホームページ
  • 国のホームページ
  • 避難所
  • 行政職員による巡回
  • 社会福祉協議会
  • 災害ボランティアセンター

など、さまざまな場所から発信されます。

また、テレビやラジオ、地域FM、SNSなども重要な情報源になります。

一方で、自宅避難をしている方や、親族・知人宅など遠方へ避難している方は、被災地の情報が入りにくくなることがあります。

そのような場合でも、

  • 自治体ホームページを定期的に確認する
  • 被災地に残っている知人と連絡を取り合う
  • 行政からのお知らせを受け取れるようにしておく

など、支援情報に継続して触れられる環境を意識して確保しておくことが大切です。

支援制度は、「知らなかった」ことで利用できなくなってしまう場合もあります。

情報を集めることも、災害時には大切な備えの一つと言えるでしょう。

「行政書士に頼まないとできない」のではありません

ここまでご紹介した制度の多くは、行政書士に依頼しなければ利用できないものではありません。

ご自身で申請できる制度も数多くあります。

行政機関も、災害時にはできるだけ被災者が手続を進めやすいよう、相談窓口を設けたり、必要書類の案内を行ったりしています。

また、災害の規模によっては、行政書士会をはじめとする士業団体が、被災地で無料相談会を開催したり、相談員を派遣したりすることもあります。

相談内容や実施期間は災害ごとに異なりますが、制度の利用方法や書類作成について無料で相談できる機会が設けられることもあります。

「専門家に相談すると費用がかかるから…」と最初からあきらめるのではなく、このような支援も積極的に活用していただきたいと思います。

一方で、専門家が役立つ場面もあります

一方で、災害では、ご本人やご家族が負傷されたり、大切なご家族を亡くされたりするなど、手続そのものを進めることが難しい状況も少なくありません。

また、

  • 複数の制度を同時に利用する必要がある場合
  • 相続や権利関係が絡む場合
  • 事業の再建に向けた各種手続が必要な場合

などは、制度の整理だけでも大きな負担になります。

災害では、制度を知っていても、それを調べたり、書類を集めたりする余裕がないことも決して珍しくありません。

そのようなときは、無理をせず、行政書士をはじめとする専門家や支援機関の力を借りることも、一つの大切な選択肢です。

「自分でやらなければならない」と抱え込む必要はありません。

行政制度だけではありません ― 民間保険も重要です

災害後の生活再建では、公的な支援制度だけでなく、民間の保険も重要な役割を果たします。

例えば、

  • 火災保険
  • 地震保険
  • 自動車保険
  • 生命保険や傷害保険

などに加入している場合は、保険金や各種給付の対象となる可能性があります。

行政による支援制度と民間保険は、それぞれ目的や制度が異なるため、両方を利用できる場合もあります。

被害を受けたら、行政への相談だけでなく、加入している保険会社や代理店にも早めに連絡し、必要に応じて写真や記録を残しておくことが大切です。

行政制度だけに目を向けるのではなく、公的支援と民間保険の両方を確認することで、生活再建への選択肢は広がります。

実損填補という考え方

保険には、「実損填補」という考え方が採用されているものがあります。

これは、実際に生じた損害を超えて利益を得ることはできない、という考え方です。

もっとも、火災保険・地震保険、公的支援制度などは、それぞれ制度の趣旨が異なるため、単純に「公的支援を受けたから保険金が減る」という関係ではありません。

実際にどのような補償が受けられるかは、加入している保険の内容によって異なりますので、不明な点は保険会社や代理店へ確認することをおすすめします。

おわりに

今回は、災害時に利用できる行政制度を中心に、民間保険についても触れました。

災害が起きると、普段はあまり意識することのない制度が、一斉に動き始めます。

罹災証明書の発行、生活再建支援、税や保険料の減免、住宅支援など、その一つ一つは、被災した方々が生活を立て直すために用意された仕組みです。

もちろん、本記事だけで全ての制度をご紹介できるわけではありません。

実際の災害では、その規模や地域の事情に応じて、新たな支援制度や特例措置が設けられることもあります。

だからこそ、大切なのは、「何という制度があるのか」を暗記することではありません。

困ったときには、必ず利用できる制度があるかもしれない、と一度立ち止まって調べてみること。

その意識を持っていただくだけでも、大きな違いになると思います。

行政書士としては、もちろんお手伝いできることもあります。

一方で、それ以上に私が願っているのは、「制度を知っていたことで、自分自身の力で一歩前へ進めた」という方が一人でも増えることです。

本当は、このような記事が役に立つ日が来ないことが一番です。

それでも、もしもの日に、

「そういえば、あの記事で読んだことがあったな。」

と思い出していただけたなら、この記事を書いた意味は十分にあったのだと思います。

※本記事について

※本記事は、執筆時点(2026年)の一般的な制度をご紹介したものです。

実際の災害時には、被害状況や地域によって特例措置や新たな支援制度が設けられることがあります。

最新の情報は、被災した自治体や関係機関の発表をご確認ください。

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